誰よりも狙われた男
原題:”A Most Wanted Man”
こーいうなんとも泥臭い男を演じさせたら右に出る者はいなかったのになぁ。なんと惜しい人を亡くしたことか。あらためて合掌しつつ。
911が世界を変えたあとのドイツ、ハンブルグ。対テロリストの諜報機関を率いるギュンターは、密入国してきたある男に目を付ける。その男 イッサはイスラム過激派の1人とされていたが、ロシアの将軍を父に持つ複雑な血筋。憎むべき父の残した1000万ユーロの隠し資産を受け取るためにやってきたのだった。ギュンターはこの男を使ってテロリストの資金ルートを探ろうとするが、ドイツの公安はCIAと共にイッサを逮捕しようとしていた。
「裏切りのサーカス」のヒットで一躍脚光を浴びたジョン・ル・カレ原作のスパイミステリーの映画化。007のような派手な演出ではなく、緻密な仕掛けで関係者を巻き込んでいくリアルな描写は地味だが非常に現実味のある世界で、さらにフィリップ・シーモア・ホフマンの渾身の演技が合わさってぐっと引き込まれる。ラストシーンの裏切りに激怒するところは、思わず彼と一緒に叫びたくなる。ああ、ホントに惜しい人を亡くしたものだ……。
てことで主演はフィリップ・シーモア・ホフマン。これが最後の主演作になり、残すは「ハンガーゲーム」シリーズの2本。「MI:3」の悪役とか「ザ・マスター」の教祖とか、一癖ある役がとても似合う人だった。密入国のイッサを救おうとする人権派弁護士アナベルにレイチェル・マクアダムス。実はこの映画のもうひとつの目標は彼女。(笑)そう、実はレイチェル・マクアダムス特集の一本でもあったんですねー。やっぱり乗ってる女優が出てるといいね。(マテ そして謀略戦に巻き込まれていく銀行家にウィレム・デフォー。他にはロビン・ライト、グレゴリー・ドブリギンなど。
監督はアントン・コービン。
主人公 ギュンターの想いー力ずくではなく、いろいろな立場のもの(テロリストもスパイも)が納得した上で協力して世界を平和にしたいという想いに共感できれば、この映画は楽しめるしラストの怒りも心に響く。オトナなスパイ謀略映画って感じですかね。