若旦那の独り言wp

Runnin' Wild

終戦のエンペラー

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原題:”Emperor

日本人にとっては当たり前の思想と最近知られてきた事実描いた映画なんだけど、こーいうことが米映画から出てきたってことを喜ぶべきだろう。……つか、皇室に関する話は日本では映画化できないか。ましてや戦争責任の話なわけで。

続きには政治的な見解がかなり濃くなってしまったので、興味のない人は続きを読まないでスルーしてください。(笑)

太平洋戦争が終わり、アメリカ占領軍がマッカーサー元帥と共に日本へやってきた。彼等は平和に対する罪を問い、戦争を起こした者たちを捕まえて処罰しようと活動を開始する。最終目標は「昭和天皇の戦争責任を問い、処刑すること」。その責任者であるフェラーズ准将は日本軍に対する論文を書き、日本に住んでいたこともある知日派。その彼が日本にやってきたもうひとつの目的は、開戦と共に引き裂かれた恋人あやを探すことだった。

今でこそA級戦犯というものに意味はない(戦勝国が報復のために日本に「平和に対する罪」「人道上の罪」を問うものだがそもそも戦争は「正当な権利」であり罪ではない)ことが分かっているものの、東京裁判が日本人に自虐史観を植え付ける基となったことは確かだろう。俺も昔は「日本は戦争で悪いことをしたよね」と盲目的に信じていて、「過ちは繰り返しません」と思っていた。しかしもし東京裁判で昭和天皇が裁かれていたら、ましてや処刑されていたら、その後の日本は最後の一人まで戦っていただろうと思う。

この映画では有名なマッカーサーと昭和天皇の会談のシーンをクライマックスに、アメリカ人にはおおよそ理解できない日本にとっての天皇の存在をなんとか解き明かそうとしたものだ。しかも結局彼等には「わからない」ものとして最後まで描かれていたりする。ただ上記のような「最後の一兵まで」なんていう思想こそが、彼等が日本を恐れた最も大きな理由だ(でも多くの日本人はそれを持っている)。日本人はそーいう意味では無宗教なのではなく、神道が根底に流れていて、毎食毎の「いただきます」から何かあったときにすぐ「神様仏様……」と手を合わせることなんかも実はそこが根源なのだろう。そしてそれを象徴するものとしての天皇。今でこそ薄れているものの、当時は現人神であったわけだから、そー考えると太平洋戦争はある意味宗教戦争とも言える。国家神軍が負けるわけない、お国のために!と玉砕覚悟で向かってくる日本兵は、外国人にとっては脅威だったろうなぁ。

日本が戦争の熱に犯されていたのは事実だし、それを反省しないわけではない。でもアメリカは日本を戦争に仕向けた事実があること、東京大空襲や本土爆撃で非戦闘員である一般市民を大量虐殺したこと、そして原爆を使って人体実験をしたこと。本来はそれこそが裁かれるべき戦争犯罪だ。その罪を隠すために東京裁判を行い、アメリカがやったことを覆い隠そうとした。そのことは多くの日本人が知るべきであると思う。

……と、このへんの話を語り始めるととめどがない&いろいろと問題もあるのでこのへんで止めとこう。(笑)映画の内容そのものはフェラーズ准将とあやの悲恋の物語を交えながら、戦後処理に関してはヒステリックになることなく淡々と進められる。アメリカの理屈でコトが進む中、中村雅俊が演じる近衛文麿の「我々はあなた方を真似しただけだ」という台詞が語られただけでも良しとしなければならないか。

主演のフェラーズ准将には「LOST!」のマシュー・フォックス。久しぶりに見ましたよ。ちょっと美化されすぎ?なマッカーサーにはおそらく親日家、トミー・リー・ジョーンズ。日本側キャストには初音映莉子、西田敏行、伊武雅刀、桃井かおりなど。なかでも西田敏行の演技は素晴らしかった。慣れない英語でもあそこまで張れるってのは、さすがは日本を代表する俳優だなーと(人格はどうあれ)。
監督はテレビ映画出身のピーター・ウェーバー。

東京大空襲を知らない人たちにこそ、この映画は観てもらいたい。そういう意味で、アメリカでこの映画が作られたことは良かったと思う。世界の多くの人がこの映画を観てくれるといいな……ってもっと日本人の精神性がわからなくなるかもしれないけど。

Written by ei

8月 25th, 2013 at 11:11 pm

Posted in Movies,Roadshow

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