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Runnin' Wild

英国王のスピーチ

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原題:”The King’s Speech

うむ、納得のアカデミー賞作品賞受賞作。人ではなく「王」として生きなければならなかった男と、その孤独を理解して寄り添おうとした男の友情のお話、とも言える。

20世紀半ば、時代は2度目の世界大戦へと向かいつつあった。当時英国国王の次男、ヨーク公は子供の頃からの吃音に悩んでいた。この先公務に就くにあたり、人前で話す機会が増えてくることから、吃音を克服しようと言語聴覚士 ライオネル・ローグの元を訪ねる。ライオネルは王族である彼に対して対等に、信頼関係を持って接することを望み、治療が始まった。
国王崩御により兄が王位に就くことになったが、兄はそのとき付き合っていた女性と結婚するために退位。本来なるはずではなかった王になった彼は、再び吃音を再発するが……。

最初に思ったのは、英国と同じく王族を持つ国として、日本の皇族がどのようなプレッシャーにさらされているか、そしてその中でご結婚なされた皇太子と皇太子妃のお気持ちはどれほどのものかということだった。思い起こせば皇太子殿下は、雅子妃殿下とご結婚されるとき、「全力でお守りします」とおっしゃったという。そして今、体調が思わしくなく、精神的にもプレッシャーに晒されている妃殿下を、このときのお言葉にかけてお守りしようとしている皇太子殿下のお姿は、日本人らしく約束を守ろうとする正しい姿勢に感じられる。
映画の中ではすでに英国王室は疲弊して、かつての姿はないと語るシーンがある。日本の皇室もまた同じだ。しかし皇室はやはり日本人の心の支え。我々は皇室の方々の姿勢を範とすべきであり、皇太子殿下のあり方はそれに値するものであると思う。

さて映画は、実在の人物であるジョージ6世とライオネル・ローグの物語。小さな頃からプレッシャーに晒されたことが原因で吃音になったジョージ6世に、王族としてではなく人として対等な立場で望み、信頼関係を築いていく。そしてそれこそが、ジョージ6世に必要なことだった。妻と子供たち以外、彼を人として見ていない。「王族らしく」「王たらんとすること」、それこそがジョージ6世の吃音の原因であり、ローグはそのために彼との個人的な関係を結ぶことこそが大事だと考えたのだろう。

内容には実際にジョージ6世の吃音の治療に取り組んだローグの治療メモなども参考にされており、ある程度の脚色はあるものの史実に基づいたものとなっている。ともすればつまらない内容になりがちなこの手のお話を最後まで面白く見せた本作は、オスカー受賞作として十分な力があると言えるだろう。

主演はコリン・ファース。渾身の演技で待望のオスカー受賞。妻エリザベスにはヘレナ・ボナム=カーター。彼女は凄く良かった。気弱で沈みがちなヨーク公に対して、とてもどっしりと構えた彼女も、この映画を支えた一人だ。ライオネル・ローグにジェフリー・ラッシュ。あー、そうか、バルボッサか(「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズ)。他にマイケル・ガンボンなど。
監督はトム・フーパー。まだ映画経験は少ないのに見事でした。

「ソーシャル・ネットワーク」とのオスカー争奪戦は、どちらが取ってもおかしくないと思う出来だったと思う。ただストーリーとしてアカデミー委員好みなのはこっち、というくらいの差かなぁと。どちらも十分に面白いので、観て損はないでしょう。

Written by ei

3月 1st, 2011 at 11:40 pm

Posted in Movies,Roadshow

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