アンチヴァイラル
原題:”Antiviral“
クローネンバーグ息子の才能は父譲りか、それともそれに劣るのか。ま、趣味の悪さという点では確かに受け継いでると言えるのかもしれず。
時は近未来。世界はセレブに対する感心が過熱し、いまやセレブが罹った病気やウィルスを購入して自分で感染する時代に。セレブたちもそれに応えて会社と専属契約を結び、病気にかかると呼び出して病原菌を採取させていた。シドはその会社に勤める技師。彼の会社で扱っているハンナのウィルスを自らに接種したシドだったが、ハンナはその病気で命を落としてしまう。ハンナのウィルスに感染したシドは、ウィルスを求める人たちに追われることに……。
クローネンバーグの息子というブランドを背負ってデビューしたブランドン・クローネンバーグの長編第1作目。この趣味の悪さは若き日のクローネンバーグを思い起こさせる。脚本も自分で書いてるわけで、とすればこの趣味の悪さは筋金入りか。(笑)ただ父の強烈さにはまだ届いていないというか。「裸のランチ」や「ヴィデオドローム」を感じるシーンもあるものの、頭にガツーンとくるのとはちょっと違う気持ち悪さを感じる。
憧れのセレブのウィルスに罹患することで一体感を感じるというマニアックな欲求、それらを含んだ「加工肉」を食べるというカニバリズム的な気持ち悪さ。ガジェットや小物は揃ってる気もする。これはまだ長編1作目ということを考えれば、この先大化けする可能性だってある。「バッド・テイスト」なんていうとんでもない映画を撮ったピーター・ジャクソンがオスカーを獲る時代(笑)、この先のブランドンの進化に期待したいところだよなーと。
主演はケイレブ・ランドリー・ジョーンズ。ヒロインのサラ・ガドンはお父さんの最近のお気に入り女優で、製作中の次回作にも出演予定らしい。まーほかは適当に。
監督はブランドン・クローネンバーグ。
昔のクローネンバーグが好きな人はまぁとりあえず観ても大丈夫。一般的には生理的に受け付けないお話なのでオススメはしません。