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Runnin' Wild

ジャンゴ 繋がれざる者

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原題:”Django Unchained

レオ様、初の悪役で話題独占!と思ったらクリストフ・ヴァルツに全部持ってかれちゃったこの映画。でも内容からすれば間違いなくクリストフ・ヴァルツの方が上なのよね。つくづくツキがないレオ。

時は19世紀、南北戦争よりも2年ほど前でまだ奴隷制度が「合法」であった時代。逃亡奴隷のジャンゴはお尋ね者の三兄弟の顔を知っているという理由で賞金稼ぎのDr.シュルツにその身を助けられる。三兄弟を捕まえたあとは自由の身になるはずだったが、ジャンゴの銃の腕前や白人の悪党に対する感情を知ったシュルツはジャンゴを相棒にすることに。そしてジャンゴには、自分と共に逃げ出して売られた妻を助け出すという大望があった。シュルツは自分の母国語であるドイツ語を話すというジャンゴの妻に運命を感じ、ジャンゴと共にミシシッピの大荘園主キャンディに挑む。

タランティーノはこの映画は奴隷制を正しく見つめるための映画と語っている。アメリカは正義の国で、100年ほど前に黒人を人として扱っていなかったという事実を避けているというのだ。この映画を観ると確かにその当時の白人の黒人に対する扱いの酷さは目に余るものがあり、こんな国にそもそも「存在しない」従軍慰安婦問題をいちいち言われたくないと日本人は思う。つーか日本は区別はあっても差別のないいい国だったんだなぁと。

奇しくも同じくアカデミー賞候補になった「リンカーン」も、この奴隷制度を描いたもの……なんだろうか。タランティーノが偉いのはこの映画を黒人の視点、下層から描いていることだ。もし「リンカーン」が白人の視点、いや一人の偉人を讃えるためだけの映画なのであれば、脚本賞をこちらが取ったのも頷けるところだ。

そして助演男優賞レースも、なんかどこかで「この映画でこそレオ様が!」なんて声も上がっていたが、クリストフ・ヴァルツの怪演を見てしまうとレオ様なんざーどーでもいいって気になる。(笑)「イングロリアス・バスターズ」ではもう憎らしさ100倍だったこの人、やっぱりうまいんだろうなー。

で、改めて今年のアカデミー賞を語ってみると、なんだか「らしくない」「バランスを取った」年だったなと思う。作品賞候補は9作あるうちの7作はメジャー系の映画。こんな年は俺が映画を見始めてから始めてだ(そもそも俺の映画傾向からいうとアカデミー賞を取る映画は興味の範囲外であることが多い)。そして各賞を取った人たちを眺めてみると被りのない、バランスを取った配分。まぁ確かに今年は全米の興行収益は非常に高かったし作品のレベルも高いと言われてるけど、それ以上に「メジャー系に賞レースを意識してもらいたい」という意志が働いたんじゃないかっていう気がする。どんなに芸術的な作品を作るにしても結局はお金がないと無理なわけで、メジャーが金をかけて作った映画が賞を取れないのでは作る方がお金を出してくれなくなる。だからこそ主要部門を上手にバラけさせて、「賞を取ることは収益に繋がる」という構造を作りたかったんじゃないかと。実際、アカデミー賞が決まった後観た「世界にひとつのプレイブック」は平日なのに入りが良かったし、この映画も昼間から結構人が入ってた。そんな微妙なバランスの取り方が、俺的にはちょっとひっかかる今年のアカデミー賞でした。ちょっとうがち過ぎ?

さて話は戻して、主演はジェイミー・フォックス。やっぱり「Ray」のあの熱演が心に残ってるこの人、今”The Amazing Spider-Man 2“を撮影中だそーな。そして二度目のオスカーウィナー、クリストフ・ヴァルツ。クセのある演技は実に見事。主演ではなくバイ・プレイヤーとして今後も存在感を発揮しそう。そして「また」オスカーを獲り損ねたレオナルド・ディカプリオ。俳優休業宣言はもう賞が取れないことでどーでも良くなったか?さらにすげーヤなヤツの役でサミュエル・L・ジャクソンも。
監督はもちろんクエンティン・タランティーノ。映画内にも登場。あ、そーいえばトム・サビーニの名前も(俳優でw)。

言い方は悪いが、アカデミー賞らしくない映画かもしれないなぁ。だって面白い。(笑)3時間弱あるけど最後まで飽きさせない。そして奴隷制がどれだけ酷いものだったかをちゃんと実感させてくれる。監督の思惑通り、な映画なのだった。

Written by ei

3月 2nd, 2013 at 1:10 pm

Posted in Movies,Roadshow

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3 Responses to 'ジャンゴ 繋がれざる者'

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  1. 「ジャンゴ」うどん県、というか中四国地方で上映館が一つもありません。なってこった。
    という訳で、未だ未見です。来週末所用で上阪しますのでその折に、と期待しています。
    アカデミー賞、どうなんでしょうね?勿論イロイロと オトナの事情 が或ることは想像に難くないのですが、、、。
    右左に揺れつつも長い目で見るとけっこう真ん中を進んでいってるのではないでしょうか?
    シャーリー・バッシー姐さんの貫録が十分すぎてw

    biomax

    2 3月 13 at 16:11:02

  2. 一時期、アートな方向に振れすぎて、見ててもちっとも面白くない時期があったんですよ、アカデミー賞。受賞作だからといって見に行こうとも思わなかったし。
    受賞作が大衆化したのはここ数年かなーという気がしてます。アカデミー委員会が好きな人、嫌いな人でもらえるかどーかが別れるよなと。そーいう意味ではメリル・ストリープや今回のジェニファー・ローレンスは委員会に愛されてる人、レオ様は嫌われてる人と言えるかと。

    ei

    2 3月 13 at 16:16:51

  3. まぁ、最終的な受賞作品、受賞者は「委員会の好み」に左右されるかな、とは思います。
    あのジャック・ニコルソンもノミネートされてもなかなか受賞出来ませんでしたものね。
    スピルバーグも長い間貰えませんでしたし。

    biomax

    2 3月 13 at 19:24:20

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