ものすごくうるさくて、あり得ないほど近い
原題:”Extremely Loud & Incledibly Close“
もう10年以上も前の話になってしまったのだなぁと思うと共に、大切なものを失った人たちは今もそこにいることを感じる。そして我々もまた。
考え続けることの大切さを、続けることの大切さを教えてくれた父を9.11で失ったオスカー。父の遺品の中から出てきたのは、一本の鍵だった。いったいどこの、あるいは何の鍵なのか?この鍵こそが父の最後の言葉に繋がると信じたオスカーは、鍵が入った封筒に書かれた”Black”の文字をたよりに、ニューヨーク中のBlack氏を訪ね歩く。不可能とも言えるこの鍵の行方を捜し当てたとき、彼は何を見つけることができるのだろうか。
10年前のあの日、俺は何をしていただろうか。記憶はとても曖昧で夜だったことさえ覚えていない(昼間だったという記憶は映像がそうだったからだろうか)。事件が起こった当時からアメリカの陰謀説を支持していた俺(苦笑)は、その映像にショックを受けながらも事件で大切なものを失った人たちがいることは感じ取れなかった。今となっては鈍感なことだなぁと思う(アメリカ陰謀説は別として)。
この映画では事件そのものではなく、大切なものを失った人たちがもう一度前に進むためにどうしたかということが描かれている。オスカーが抱えているものは特に大きくて、それは観ている者の胸を締め付けるが、彼はその想いを胸に秘めたままただ前に進み続ける。それが自分の次のステップだと信じているからだ。そしてまた、皆がオスカーと同じく悔いを抱えていて、でもそれを乗り越えるために日々を生きている。喪失と再生がこの映画のテーマだ。
この映画の見どころはやはり14歳のトーマス・ホーンくん。誰にも言えない秘密を抱えて苦しみながら前に進み続ける彼の姿はとても胸を打つ。映画は初出演で、次の映画は決まっているもののまだまだこれから。ぜひすくすくと伸びて欲しい。オスカーの最愛の父にはトム・ハンクス。苦しみながらオスカーを見守り続ける母にはサンドラ・ブロック。そして祖母の家に住み着く同居人にマックス・フォン・シドー。渋い演技でアカデミー賞助演男優賞候補にも選ばれましたな(俺にとっては「フラッシュ・ゴードン」のミンのイメージがとても強くてですねー)。
監督はスティーブン・ダルドリー。
最初、このタイトルを見たときは「これは9.11そのものを指しているの?」と思ったんだけど、まぁそんなことはなくて。そしてその意味はあえて語られることもなく、それぞれがその言葉に何を感じるかはあなた次第というところだろうか。