ゼロの未来
原題:”The Zero Theorem”
確かにこれは、「未来世紀ブラジル」に近い、でももっと近代的な何か。「ゼロ」とはつまり、「俺たちのやってる仕事は全部無駄」って意味だ。(笑)
有能なデータ解析者 コーエンは引きこもりで、仕事に行く以外はかかってくるかどうかも分からない電話を待ちわびる日々を送っていた。電話に出るために在宅勤務を求める彼に、会社の代表であるマネージメントはある仕事を受けることを条件に許可を出す。その仕事とは、これまで多くの者が失敗した「ゼロの数式」を解くというもの。コーエンは何ヶ月も自宅にこもってこの仕事に没頭するが、どうしても解くことができずにいた……。
テリー・ギリアムと言えばモンティ・パイソンで、俺にとってはベスト10に入る映画「未来世紀ブラジル」の監督という認識なわけで、その彼が同じように皮肉な未来を描くこの映画には超期待。上映館も少ないんだけどこれは頑張って観てこなきゃーと。
で、内容は。一言で言うなら「アップデートされたブラジル」。(笑)あの頃とは違う現在が紡ぎ出す未来はもっとカラフルで低俗で商業主義に染まっている。解析ツールはまるでテレビゲーム、個人向け広告は街中でも付いてくる。そしてかつては最後の逃避の場だったアタマの中の妄想は、仮想現実という形で実感できる。果たしてこの世界の中で人は何ができるだろうか。
そんな背景の中で描かれるのは、人付き合いのできない現実を逃避したい我々のような1人。自分の人称代名詞が「わたしたち(we)」なところなんてまさに現代のone of them、「俺ら」な世界と言える。そーいう意味ではこの映画の主人公に共感する人はきっとネットの中にたくさん見つけることができることだろう。
主演は最近、怪優の名をほしいままにしているクリストフ・ヴァルツ。今回もアタマを丸めて自閉症気味の初老の天才を怪演している。ーもっとも、もう少し彼が若かったら、主人公に対するシンクロ率が高くなってもっとハマれたかもしれない。共演にはデヴィッド・シューリス、メラニー・ティエリー、ルーカス・ヘッジス。そしてマネージメントにはマット・デイモンが、他にティルダ・スウィントンもゲストで。
監督はテリー・ギリアム。爆笑問題なんかと絡まなくていいから。ちゃんと仕事してください。(笑)
まぁ引きが同じってところも含めて、「未来世紀ブラジル」を見た人はとりあえず観るべき映画でしょう。