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神と悪魔の遺産

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いよいよこの作品で本格復活する始末屋ジャックシリーズ。シリーズ第2作目となるこのお話はホラーではなくアクション活劇に近く、とりあえずファンに対する「ただいま!生きてたよ!」(まぁそれは「ナイトワールド」に出てくるのだから生きてるんだが)という挨拶なのかもと。いつもと同様、テンポの良い面白いお話に仕上がっている。

あの戦慄のラコシとの戦いになんとか生き延びたジャックの元に新たな依頼が舞い込んでくる。亡くなった父が残した家を相続したはずの女医アリシアが、「あの家を燃やして!」というのだ。家に近づくのさえいやだというアリシア、その家を言い値で買い取るという腹違いの兄、さらにその後ろに見え隠れする謎の集団。そしてこの家に関わった者たちがすでに何人も死んでいた。……果たしてこの家にはどんな秘密が?

前回のような「怪物」と戦うと言った派手さはないもののちゃんとミステリー仕立てになっており、その中でもちろんジャックは大活躍する。ジャックの悪癖とも言える「好奇心」が、関わるのは止めた方がいいと始末屋の本能が知らせる事件さえもその「謎」を知りたいがために首を突っ込んでしまう。さらに悪に対する怒りが、彼を突き動かすというところは変わっていない。
さらに始末屋ジャックシリーズは2作目以降、ちょっとずつ社会現象に対する作者の見方をジャックを通して教えてくれるようになっている。この作品の中では「コカイン中毒になった親から生まれるエイズの子供たち」という大きな問題を描き、特に人々のエイズに対する偏見(というかこれは未知のモノに対する恐怖なんだろうけど)を悲しむ。F.ポール・ウィルスン、実は本職は医師。エイズがどういうものかを知っているからこそ、彼=ジャックは無垢な子供たちの苦しみを嘆くのだろう。そして世の中の人の無理解をなんとか正したいという想いがあるのかもしれない。

最終的にお話はある意味SFな方向へ進むのだが、この作品はほぼハードボイルド・アクションと言っていい。一作目で彼がどうなったかが気になっていた人は、彼の帰還を一緒に喜ぼう。

Written by ei

9月 5th, 2009 at 1:24 am

Posted in Books

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