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県庁おもてなし課

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県庁おもてなし課
県庁おもてなし課

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有川 浩
角川書店(角川グループパブリッシング)
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とりあえず、県庁勤務の親友に送りつけようかと思っていたり。これはいろいろな人に読んでもらいたい作品だ。

高知県の県庁にできた「おもてなし課」。縦割り行政、お役所仕事がまかり通るその場所に生まれた突飛な名前の観光部署が、高知県をどうやってPRしていくかを模索していく。そのための切り札は、かつて「パンダ誘致論」を唱え、県庁を追われたある男を起用することだった……。

高知は自分にとっては思い入れのある県だ。母が小さい頃住んだ土地。父が大学時代を過ごし、母と出会った土地。そして10年前にたくさんの仲間たちと毎夏を過ごした特別な場所。自分の中では勝手に第二の故郷というか、とにかく大切な場所のひとつ。この小説はその高知県を舞台に、観光をひとつの県の柱にしようとする県庁のおもてなし課を描いている。
読み進めていくにつれ、自分たちが10年前(もう10年かー)に活動した高知がどんなだったかを思い出す。いろいろ無茶もしたし苦労もした。至らないところも多々あって、誰かの機嫌を損ねてしまったこともあった。それでもやっぱり皆が「楽しかった」「ありがとう」と言ってくれることがとても嬉しかった。やり終えた充実感は何にも勝るものだった。あの思い出は俺にとっては今でもとても大事な時間だし、やっぱりまた行ってみたいと思う。

高知で過ごした時間は決して長くはないけど、確かにアクセスの不便さや情報の少なさ(特に10年以上前、まだインターネットによる情報発信が少なかった頃のこと)は気になった。一歩間違えば谷底に落ちていく道を走ったし、四万十へ行くにも3時間という時間はどんなに頑張っても短縮できなかった。でもそんな不便さも、「都会」から来た人たちにしてみれば楽しいドライブだったり、細くて通りにくい道はジェットコースターだったり、何より目的地に辿り着いて食べるご飯は美味しかった。

不便さも商品にする、というのはなかなか言いづらいことだろう。「言い訳だ」と取られかねない。それでもそこに開き直れたとき、少ない予算でもやるべきことの優先順位は見えてくる。「何もない、でも光がある」というキャッチフレーズはその現れだ。
お役所目線から脱し、民間感覚を身に付けて、スピード感を持って仕事ができるようになること。今の「お役所」に求められているのは正にこの感覚だ。ハードルは高いだろう。それでも変わっていかなければいけない。

地元、広島で頑張っている親友の話を聞いていると、若い人たちはいろいろな面で変わってきていることも感じる。そんな人たちに対するエールでもあるこの作品は、今や売れっ子作家となった有川節も健在で一気読みができる楽しい話だ。そしてこの本を読んだ人たちが高知に興味を持って、一度行ってくれるなら。それはきっと高知県のためにもなる。

高知、いいところです。ぜひ一度行ってみてください。

Written by ei

4月 5th, 2011 at 4:17 am

Posted in Books

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