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Runnin' Wild

ダイナミックフィギュア

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ダイナミックフィギュア〈上〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
三島 浩司
早川書房
売り上げランキング: 9201

ダイナミックフィギュア〈下〉 (ハヤカワSFシリーズ―Jコレクション)
三島 浩司
早川書房
売り上げランキング: 7796

うーん、やっぱりエヴァー(ミサトさん風)だったなぁ。

「二足歩行兵器の新たな基準作」と帯に歌われ、表紙イラストに加藤直之を迎えた豪華な『ロボット小説』、それがこの「ダイナミックフィギュア」(上下 三島浩司)だ。

ある日突然宇宙に現れた「カラス」によって築かれた宇宙空間の巨大リング。このリングは人間にとって究極的忌避感を抱かせる。二つ目のリングが建造され始めたとき、新たに現れた「クラマ」によって作業は中断された。しかしリングの一部がニュージーランドと日本の四国に落下。剣山の麓に落ちたかけらは「剣山セグメント」と名付けられ、半径35キロ四方は人が入れない地になる。そして剣山周辺から現れる異形の進化生物「キッカイ」。日本は四国に対する核による殲滅を受け入れず、北上してくるキッカイたちを迎え撃っていた。徐々に進化し、巨大化してくるキッカイ。対する日本の切り札こそ全長20mを越える二足歩行型特別攻撃機・ダイナミックフィギュアだった。しかしその力はあまりにも強く、世界は日本の新たな力を不安視していた……。

というのが粗筋。一番忙しかった今月アタマあたりに本屋さんで見てしまったのが運の尽き。ストレス解消(笑)もあって早速Amazonで購入し、しばらくは積んどいたんだけど読み始めてしまい……。結構時間かかったけどよーやく読了したわけだが、まぁアタマの中はエヴァーwのBGMが鳴り止むことはなかったという。(笑)

上下巻800ページのボリュームは書痴な人にはそれだけで武者震いがするレベル。しかも巨大ロボットものだなんてもう。(笑)でもいろんなアイテムやアイデアや話の端々にエヴァーが透けて見えてしまうのは、やはりそれだけあのアニメは大きなインパクトを与えたということなんだろうなと。
ロボットものを描く場合、特にSF小説(ラノベはこの際少しおいとこう)で大変なのはリアリティだと思う。なぜ巨大ロボットが必要なのか、どうして動くのか、戦うべき相手は何?など解決すべき問題はキリがない。そんなもん気にして小説書けるかっ!と言われればそれまでだが、だったらそれはSFなのかと。
このお話ではある程度それを正しく解決していきながら、最終的には無理だったというところが惜しいし、宇宙に現れたモノたちがイマイチよく描けてないのも問題。さらに仕掛けが透けて見えるのはよろしくない。もっと映像的に読ませて欲しかった気がする。

それでもまぁ最後まで読ませる力はある。エヴァーを知らないSF者なら十分に楽しめるかもしれない。

こっから先は完全ネタバレ。w 興味のある人、読んだ人はどーぞ。読みたいと思ってる人は、お任せします。(^-^;

このお話にはもうひとつ、ハッピーエンディングが可能だったと思うのだ。神の概念として教えなければならないもう一つのことー「赦し」が抜けていて、もしそれさえちゃんと伝わっていればこんなエンディングにはならなかったと思う。なぜそれを教えないのかが最後まで分からなかった。正しく神を作れたんじゃないの?

いくつかの矛盾もあって、その中の一番は決して倒すことができないはずのクラマを「魂の力」で倒せるのはおかしいという点。いやいや、精神論で倒せる相手ならそんなもんとっくに倒せてるんじゃないんですかい?何か違う解決方法というか、違う手段は考えられなかったのかと。ま、それがザンボット的特攻であったとして、相殺して対消滅とかの方がまだ納得できる。「魂」で倒すってのは確かにロボットものによくあるパターンだけどそれはアニメの中のことであって、リアルロボットSFと銘打つならそんなことをしてはいけない。

最後の最後で主人公を変化させてしまうというのも、確かにそーなる必要はあったしきっかけはそれであるべきだけど、あまりにご都合主義。もしそーならなかったらどうするんだと。最後の舞台の前にそのタイミングを用意すべきだったはず。

リアルSFを目指しながら、魂ゆさぶる巨大ロボットものを捨てきれず、いったりきたりしているうちに綺麗に終わらせ損ねたというのが正直な印象。アニメならそれでいいのかもしれないが、小説でこれは間違いだ。

とまぁかなり辛口な。そりゃ、1800円×2出してるんだもの、期待に対する残念感はなかなかぬぐえないっすよ。(^-^; まだエヴァーの方がSF的に正しい、と思わせて締まった時点でやっぱりダメかも。

Written by ei

3月 27th, 2011 at 4:19 am

Posted in Books

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