ローガン
原題:”Logan“
X-Menの舞台を借りて、後悔の中苦しんで生きる一人の男が望みを果たして消えて行く姿を描いたドラマ。それは17年間、大役を務めてきたヒューの姿にも重なるものでもある。
ミュータントが生まれなくなった時代。「ウルヴァリン」ことローガンは、なぜか本来の能力であるはずの驚異的な治癒力、不死身の力を失いつつあり、リムジンの運転手をしながら糊口をしのいでいた。老衰で自分の能力を抑えることができなくなりつつあるプロフェッサーXと共に大きなヨットを買って海に出て、そこで死ぬことを考える日々。そんなとき、ローガンの元に元看護婦だというガブリエラから11歳の少女をある場所に送って欲しいという依頼を受ける。その少女 ローラはローガンと同じヒーリングファクターの能力を持ち、手足の先からアダマンチウムの爪を出すミュータントだった。
ヒュー・ジャックマンという人が世界に登場するきっかけとなったのはやはりX-Menの成功だ。ウルヴァリンというX-Menシリーズの中でも人気のあるキャラクターに命を与え、以来他の映画でも成功してハリウッドの星になってからも17年の長きに渡ってこの役を演じてきた。そんな彼がウルヴァリンを降りるに当たって大きな決意でこの映画に取り組んだことは想像に難くない。そして彼はこの舞台で、ヒーローらしくない男の「死」を見事に描き切った。殺戮の中で生きてきたローガンがその生涯を振り返って死を願い、それでも自分の娘の命を大切に思う。次に続く命のために、自らの命を燃やす。それはやはり、我々が知るローガンそのものだ。
X-Menシリーズには色々な世界があって、実は今回のローガンもそんなマルチバースの一つで語られた”Old Man Logan”から着想を得て作られているそーな。なので時間軸的にはどこに属している訳でもない。そもそもこの「ウルヴァリン」三部作はどの話も独立していて、「どこかの世界にいるローガンが事件に巻き込まれる」という展開。なので三部作の前を見ていなくても大丈夫。
主演はヒュー・ジャックマン。もうウルヴァリンとしての姿を見ることはないのかと思うと感慨深い。しかもあの精悍な姿でなく、年老いて苦しむ姿がラストというのはもう一度戻ってきて!とは言えない迫力があって、ある意味ずるい。w でも今のヒューだからこそこの境地にたどり着いたとも言えるのかもしれない。この役を大事にしてきた彼は、監督に何度も何度も「この演技でいいか」と確認し、話し合ったという。彼がいかにウルヴァリンにかけていたか、そして正しく葬り去ろうとしたかがうかがえるエピソードだ。共演には、同じく今回が最後のプロフェッサー役になるパトリック・スチュワート。76歳、彼もまたヒューと同じくこのシリーズでその地位を大きくした人であり、この映画で共に去っていくのは宿命なのかもなぁと思う。そういう意味ではこれはファーストX-Menシリーズの終了、次の世代への交代となるのかもしれない。X-23ことローラはダフネ・キーン。X-23という型番はウェポンXの製造番号で、X-Men 2」に登場したデスストライクと同じなんですな。小さいながらすごいことをやってて、思わず応援したくなります。
監督はジェームズ・マンゴールド。「ウルヴァリン:SAMURAI」に続いてメガホンを取っていて、ヒューとの信頼関係も厚いよーで。
もちろんヒューのキャリアはこれで終わらない。世界的にも「いい人」として認知されている彼(笑)、次は”The Greatest Showman””Broadway 4D”というミュージカルが続く予定だそーで。歌って踊れるエンターテイナーとしてまだまだ活躍してください。